サマータイム ~時間を操作することの是非

皆さんは「サマータイム」をご存知でしょうか。欧米を中心に、夏の間、時計の針を1時間進めるという制度です。たとえば米国では、3月の第2土曜日午前2時(現地時間)に時計の針を1時間進めて3時とし、11月の第1日曜日午前3時に1時間戻して午前2時としています。ヨーロッパでは3月と10月の最終日曜日午前1時に変更が行われています。

なんでこんなことをするのかというと、
① 明るい時間を有効に使えるので、照明の節約になる
② 交通事故や犯罪が減る
③ 活動時間が増えることで、経済が活性化する
④ 余暇を充実させることができる
といった理由が挙げられています。
しかし省エネ効果については否定されていて、確かに照明用の電気消費量は減少するものの、冷房用の電気消費量が増加し、全体としてはむしろ電気消費量は増加することが示されています。
また時刻切り替え時にむしろ交通事故が増加するという報告もあります。
ロシアでは切り替え時に心筋梗塞で死亡する人が増え、2011年を最後に廃止されています。
日本でも1948年から1951年にサマータイムが実施されましたが、残業が増えるなどの労働条件悪化のため、1952年以降は廃止されました。

サマータイムを本格的に導入したのはドイツとイギリス(共に1916年)と言われていて、第一次世界大戦に伴う資源節約が目的でした。米国でも1918年に導入されたようですが、不評で2年で廃止。それが第二次世界大戦中に再び復活。これも資源節約が目的でした。なぜかそれが現在まで継続しているようです。
米国ではサマータイムのことを「デイライト・セイビング・タイムDaylight saving time(昼間の光を無駄にしない時期)」と呼ぶようですが、確かに昔は省エネに寄与したのでしょうが、冷房など各種電気機器が発達した現代社会においては、ほとんど意味がないと言ってもいいのかもしれません。
それなのに日本では、経済産業省や日本経済団体連合会がサマータイムの導入に積極的です。その目的は経済の活性化。サマータイム導入により本当に経済が活性化するのかどうかはわかりませんが、フランスでは否定されているようです。少なくとも余暇を楽しむことの下手な日本人労働者においては、長時間労働に繋がるであろうことは、想像に難くありません。

最近政府が「ゆう活」なるスローガンを打ち出し、勤務時間を1時間程度前倒しして朝早くから働き、夕方からは家族や友人との時間を楽しむ、「夏の生活スタイル変革」を提唱しています。将来は、一旦頓挫したサマータイムの導入を、という思惑が透けて見えます。とりあえずは内閣府の職員から、ということのようですが、果たして一般社会に受け入れられるのでしょうか。私には甚だ疑問です。たぷん残業時間が増えるだけなのではないでしょうか。仮に夕方早く仕事が終わったとしても、その後の時間を楽しめる人がどれだけいるでしょうか。
また、時間が1時間早くなったことで、就寝時刻も1時間早めてスッと眠りにつき、朝は1時間早くパッと目覚めるということが可能なのでしょうか。

結局なんだかんだで寝る時刻は変わらず、朝だけ早く起きなければならなくなり、大事な睡眠時間が削られることになるのでは、ということが危惧されます。コラム81でもお話ししたように、大人は約7時間の睡眠が必要と言われています。睡眠不足が続くと集中力が低下します。そのため仕事上のミスが増えます。これによる損失を考えると、政府や経済界が目論む経済活性化には必ずしも結びつかないのでは、と思うのですが…。

いずれにしても、自然を人為的に操作しようとすること自体が人間の思い上がりであり、いつか必ず自然のしっぺ返しを食う…、私はそんなふうに考えています。

 平成27年8月12日
病院長 藤原正博

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