「いい医療」を受けるために

平成23年4月に始めたこのコラムも、いよいよ100篇目となりました。ご愛読(していただいているかどうかはわかりませんが)に感謝申し上げます。

このコラムを書き始めたのは、混沌とした医療情勢の中で、皆さんに満足のいくいい医療を受けていただきたい、そのためには医療というものを知っていただかなければならない、という思いからだったのですが、果たしてどれだけお役に立てたでしょうか。

医療はもともと不確実で限界のあるものです。またリスク(危険性)もあります。そんな中で医療を実践するためには、患者側と医療側とのお互いの信頼関係を構築することが必須です。

自分は死なない、病気にはならないと考えている人は論外ですが、逆に病院にかかれば100%正しい診断がついて、100%治ると思うのは、幻想でしかありません。もちろん医療の力により治せる病気もあります。しかし全ての病気を治せるわけではありません。場合によっては思わぬ合併症や事故のため、寿命を縮めることもあります。医療には不確定要素が多く、やってみなければわからないという部分が多々あるのです。
こんな話をすると、不安になる方もいらっしゃるかもしれませんね。でも皆さんにいい医療を受けていただくためには、事実を事実として理解していただかなくてはなりません。認識のギャップを埋める必要があります。私達医師が皆さんの病気を治すために努力をするのは当然ですが、私達は全知全能の神ではありません。皆さんが私達に「完璧」を求めても、私達はそれにお応えすることはできないのです。

皆さんが「いい医療」を受けるためのカギ…、それはまず第一に、人間には寿命があり、年齢とともに身体は弱り、そしていつか必ずお迎えが来るということを理解すること。そして病気をせずに生涯を終えることなどあり得ないので、どこかで病気になるかもしれないことを自覚し、自分の身体に注意を向けること(たとえばがんの場合、早期の段階で何らかのサインがあることが多いと言われています)。健診を上手に利用して、病気の早期発見を心掛けること。医療が必要になったときにはプロとしての医師他医療スタッフに敬意を払いつつ、人として対等な、いい人間関係を築くこと。医療の限界を知り、過度な要求・期待をしないこと。病気を治そうという強い意思と、きっと治るという希望を持つこと。治癒を望めない場合は、病気と上手に付き合いながら、毎日を大切に一生懸命生きること。
口で言うのは簡単ですが、実際にはなかなか難しいことばかりですね。

101篇目は来年1月の予定です。今後も皆さんと一緒に医療を考えるために、様々な内容で話をさせていただくつもりです。
皆さんにとっても、また私達にとっても「いい医療」を提供すべく、スタッフ一同心を合わせて努力をして参りたいと思います。

かぜ、インフルエンザの時期となりました。どうかご自愛下さい。よいお年をお迎え下さい。

 平成27年12月10日
病院長 藤原正博

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