人間の寿命

厚生労働省の発表によれば、平成27年(2015年)の日本人の平均寿命は男性80.79歳、女性87.05歳でした。
1890年代から50年間は男女とも40歳代だったものが、1947年に男性50.06歳、女性53.96歳と、初めて50歳を超え、以後現在まで平均寿命は延び続けています。
長生きしたい、という思いは、不老不死の秘薬を追い求めた秦の始皇帝以来、人間の変わらぬ願望です。

でも人間っていつまで生きられるのでしょうか。平成28年6月現在で、日本人の最高齢者は男性で111歳、女性115歳です。世界で最も長生きした人はフランス人の女性で、122歳だったそうです。
最近Natureという有名な医学雑誌に、人間の寿命はほぼ限界近くまで延びていて、今後122歳を超えて長生きする人はおそらくいないだろうとする論文が掲載されました。
ただ近年は老化のメカニズムが少しずつ解明されており、将来、老化を防ぐあるいは遅らせることが可能になるかもしれません。そうなるともう少し寿命が延びるかもしれません。でもそれが人間に幸せをもたらすのかどうかはわかりませんが…。

齢をとっても元気で矍鑠(かくしゃく)としていればいいのですが、現実はそうではありません。前にもお話ししたことがあるかもしれませんが、平均寿命と健康寿命すなわち「健康上の問題で日常生活が制限されることなく過ごせる期間」とは10年位の差があり、晩年の10年間は何らかの病気のために日常生活が制限され、介護などが必要となっているのが現実です。
長生きしたいという思いを否定するつもりは全くありませんが、不老不死が望めない以上、ある年代になったらどういう生き方をするのか、そしてどういう死を望むのか、哲学的な思いに浸ってみるのも悪くないのではないでしょうか。

今の日本社会は長生きしたから幸せとは必ずしも言えない面があります。そんな中で高齢者はどう生きればいいのでしょうか。30代、40代で高度経済成長を支えた人々に対して、国はもう少し暖かい手を差し伸べることはできないのでしょうか。
かつての大家族制は崩れ、今は高齢夫婦の二人暮らし、あるいは高齢者の一人暮らしの世帯が多くなっています。そんな人々が悠々と安心して生活できるような地域社会を築くことが、国の役割ではないのかな、と思っています。
今後医療費の増加が続けば国の経済が破綻すると政府は言うのですが、国を支えるのは人、国民です。その国民が安心して生活できるよう下支えをしなければ、経済がどうの、国の発展がどうのと言っても、所詮は詮無いこと、と思うのは、私が政治・経済のセンスに欠けるが故なのでしょうか。

私もいわゆる高齢者の仲間入りをしました。残された人生はそう長くはないのかなと思っていますが、お迎えがいつ来るかは誰にもわかりません。「ああ、いい人生だった」と言ってあの世に旅立てればいいなと思っています。

平成28年10月27日
病院長 藤原正博

カテゴリー: 院長の部屋