自分で考えて意思表示をすることの大切さ

米国の大統領選挙が行われ、大方の予想を覆してドナルド・トランプ氏が勝利をおさめ、次期大統領に就任することになりました。過激な発言を繰り返したトランプ氏への風当たりは強く、戦前の予想では70%以上の確率でヒラリー・クリントン氏が勝つだろうと言われていたのですが、その予想は外れました。米国の民意はトランプ氏を選んだのです。
ここでは米国の選挙結果についてあれこれ論評するつもりはありません。申し上げたいのは、米国人の自分で考え、自分で決めるという姿勢が、国のトップをも変える力を持つことのすごさです。当初は泡沫候補とみられていたトランプ氏が、選挙戦が進むにつれて支持を拡げたのは、彼の主張に耳を傾け、自分でいろいろ考えた末、トランプ氏の主張に共感し、支持を決めた有権者がいるからです。
米国も日本同様、いわゆる組織票は重要なのでしょうが、個人の意思がそれを上回ったということでしょうか。

日本においても各政党の支持率は低く、選挙においてはいわゆる浮動票の行方が勝敗のカギを握っているのですが、日本では投票せずに棄権する有権者が多く、選挙結果は戦前の予想通りということがほとんどです。
投票率が50%に満たない場合、その選挙結果が本当に民意を反映していると言えるのか、常々疑問に思っています。主権者として自分の意思表示をするということは、とても重要なことだと思うのですが…。

医療の現場では、インフォームド・コンセントが重視されています。このことは前からしばしば申し上げているのですが、実際にはそれほど浸透しているとは言い難いのが現状です。
インフォームド・コンセントは適切な訳語がないため、そのままカタカナ語として使われていますが、基本的には患者さんの側の言葉です。すなわち、医療側から十分な説明を受けてその内容を理解し、自分で考えて自分で判断し、自分で決めて医療側に同意を与える、あるいは同意しないという一連の行為を言います。この「自分で」という部分が大切で、欧米人にとっては当たり前のことなのでしょう。でも日本人にとってはなかなか馴染めないようです。

医学医療はとても不確実なもので、限界があり、リスクも内包しています。そんな中で医療を実践するためには、患者側と医療側とのお互いの信頼関係が必須です。治療がうまくいくかどうかはやってみないとわからない、うまくいけばいいけれど、うまくいかなかったときにもその結果を受け入れる必要があります。うまくいかなかったら医療側が悪い、医療側に責任がある、それ、訴訟だ、ということでは、医療などできません。良い結果であっても望まぬ結果になったとしても、自分で決めた以上それを受け入れる、そんな潔さがインフォームド・コンセントなのかもしれません。

もしあなたが病気になったときには、担当医とよく話し合い、担当医から十分な情報を引き出した上で、どんな治療を選択するか、自分で考え、自分で決めて下さい。病気はあなた自身のもので、誰も取って代わることはできないのです。
でも、そんなこと言ったって…、自分は医療にはシロウトだし…、自分で決めろと言われても、そんなことムリムリ、とおっしゃるのなら、どんな結果になっても後悔しないような信頼関係を、担当医との間に築いて下さい。「おまえに命を預ける」という人間としての関係が築けるのであれば、それもまた潔いかもしれません。

自分で考え、自分で決めるという姿勢は、病気と対峙するときだけではなく、国の行く末を決める上でも重要で、しかも大きな力を持つということを、今回の米国大統領選挙が教えてくれたような気がします。

 平成28年11月24日
病院長 藤原正博

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