物忘れ

第一生命保険株式会社が主催した第30回サラリーマン川柳コンクールの結果が発表されました(第一生命保険株式会社のホームページより)。
応募総数55,067句のうち、第1位に輝いたのは、なおまる御前さん(30代、女性)の「ゆとりでしょ? そう言うあなたは バブルでしょ?」
世代間のギャップをコミカルに表わしているとして、女性の支持率が高かったそうです。
100位までの句が紹介されており、「ふむ、うまい」と感心させられる句がたくさんあります。傾向としては職場の上司に対する不満、妻への思い、高齢になって物忘れをするようになったことなどを詠んだものが多いようです。第2位の「久しぶり! 聞くに聞けない 君の名は」という身につまされるものもあります。「同窓会 みんなニコニコ 名前出ず」なんて、皆さんも経験があるのではないでしょうか。他にも「記憶力 ないから楽し 再放送」「備忘録 書いたノートの 場所忘れ」といった句も。
高齢者の元気な様子を詠んだ句もあります。「病院で サミットしている爺7」「ばあちゃんが オシャレにキメる通院日」「風邪気味だ 今日は病院 止めとこう」。なるほど。

齢をとって物忘れが多くなるのは自然なことです。私も人の名前がなかなか出て来ない、顔はわかるんだけど…、なんてことはしょっちゅう。少し後になって、何かの拍子に思い出すというようなことはよくあることです。でもなかなか思い出せず、気になってイライラするのは、いいことではありません。まあ、そのうち思い出すさ、と気楽にいきましょう。
物忘れというとすぐに「認知症?」と考えがちですが、認知症の物忘れと老化に伴う物忘れとは異なります。認知症による物忘れは、ある一時期の記憶がスポッと抜け落ちてしまい、思い出すことがないと言われています。その時は思い出せなくても後になって思い出せるのであれば、とりあえず認知症の可能性は低いと考えてもよさそうです。

教科書的には加齢による物忘れは体験したことの一部を忘れる、たとえば食事で何を食べたかを忘れることがあっても、食事をしたことは覚えている、そして何を食べたか思い出そうとする、しかし認知症の場合は体験したことの全体を忘れる、すなわち食事したこと自体を忘れ、物忘れの自覚がない、そしてそのことが日常生活に支障をきたす、とされています。

私は常々人間は忘れることが必要なんじゃないかなと思っています。経験したこと全てを覚えていたら、頭の中がパンクするんじゃないかと思うのです。大事なこと、できれば楽しいこと、いい思い出を頭の中に残し、いやなことは忘れてしまう…、それによってうまく心のバランスをとることができる、そんな気がしています。
でも実際にはどうでもいいようなことばかり覚えていて、肝心なことを忘れてしまうような気もしないではないのですが…。

平成29年6月8日
病院長 藤原正博

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