心肺蘇生とAED(自動体外式除細動器)

加茂暁星高校野球部の女子マネージャーが、学校から少し離れた野球場で練習後、走って学校に戻り、学校に着いた直後に倒れるということがありました。詳細はわかりませんが、突然の心室細動であったと言われています。
医療機関に救急搬送され、一旦心拍動は再開したようですが、低酸素の状態が長く続いたために、結局2週間くらい後に亡くなっています。
ご両親が「なぜAEDを使ってくれなかったのか」と嘆いているという記事が、9月3日の新潟日報に掲載されています。

実は当院でも何年か前、宴会の席上突然若い医師が倒れるということがありました。Brugada症候群という心臓の病気で心室細動を生じたのですが、幸い周りは当院のスタッフで、直ちに蘇生措置を施行、その店舗にはAEDがなかったために救急隊到着まで蘇生措置を継続、救急隊到着後電気ショックをかけ、通常の心拍動に戻って意識回復、全く後遺症を残すことはありませんでした。

若い人であっても突然心室細動を生じ、意識を失って倒れることがあります。心室細動というのは心臓の筋肉が細かく痙攣する状態で、心臓は全身に血液を送り出すポンプとしての機能を果たすことができません。この状態が長く続くと各臓器、特に脳に酸素が供給されず、不可逆的な障害をきたすことになります。
AED(automated external defibrillator、自動体外式除細動器)は電気ショックを与えることでこの心臓の筋肉の細かい痙攣を取り除き、本来のリズムに戻すための器械です。電気ショックを早くやればやるほど救命率が高まります。

新潟県の統計(平成27年)によれば、救急車が連絡を受けてから現場に到着するのに平均8.9分かかるそうです。その9分位の間何もしなかった場合の救命率は9%なのですが、その場に居合わせた人が救命措置(体外心マッサージなど)をした場合には20%と倍になるというデータ(Holmberg、2000年)があります。
また消防庁によれば、救急隊が電気ショックを実施した場合の1か月後の社会復帰率が20.3%であるのに対し、その場に居合わせた市民が電気ショックを行った場合には46.1%であったことが示されています。
加茂暁星高校にもAEDは3台あったそうですが、結局使われないままでした。

全国的にAEDの設置が進み、新潟県だけでも約7,500台が設置されているそうですが、十分には活用されていないようです。使ったことのない器械を使うのは勇気のいることです。そうであれば一度は使っておくことが重要で、ただ設置するだけではなく、何らかの形でそれを使う練習の機会を設けるべきでしょう。そうでないと「宝の持ち腐れ」になりかねません。

もしAEDが近くになかったり、使うことに自信がなかったりと言う場合には、とにかく胸骨圧迫による体外心マッサージだけでも始めて下さい。これまでは胸骨圧迫に加えて口対口人工呼吸法を併用することが推奨されて来ましたが、最近は胸骨圧迫だけでもOKというデータが示されています。
とにかく救急車が来るまで胸骨圧迫を続ける…、それが突然倒れた人を救命するカギなのです。

人間には寿命があり、いつかはお迎えが来るのですが、人生これからという若い人が事故や急な心臓病で命を落とすのは、本人にとっても周りの人々にとってもつらいことです。
救急車が到着する前に私達にできることがあるということをそれぞれが自覚すれば、もう少し救命率を上げることができるかもしれません。

 平成29年9月7日
病院長 藤原正博

※ 大修館書店より「よくわかるみんなの救急~ガイドライン2015対応」(坂本哲也 編)という書籍が出版されています。一度お読みになることをお勧めします。

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