柏崎地域の医療の将来に思いをはせて、一年を締めくくります

2017年も残りわずかとなりました。当院をご利用いただいた皆様に厚く御礼申し上げます。ありがとうございました。

当院は昭和12年に開設許可を得て、2年後の昭和14年に開院しました。そして今年、開設許可後80周年を迎えました。当院がここまで来ることができましたのは、ひとえに地域の皆様のご支援の賜物であり、心より感謝申し上げます。
今後も柏崎刈羽地域の基幹病院として、地域の皆様に「いい医療」を提供すべく、職員一同心を合わせて努力して参りたいと思っております。どうかよろしくお願い申し上げます。

「いい医療」と言いましても、どういう医療が「いい医療」なのかは定義するのは難しいところがあります。皆様がお考えになるものと私達が考えるものとは違っているかもしれません。また皆様一人一人のお考えにも違いがあるかもしれません。しかし「いい医療」を実践するためには、皆様と私達医療側との認識のギャップを埋めなければなりません。

医療は皆様のお役に立ちますが限界があり、不確実で、「絶対」ということはあり得ないこと、医療にはそれなりのリスクがあること、けっしてうまくいって当たり前ではなく、やってみなければわからないということ、等、皆様の医療についての誤解を正すべく、今年の6月以降、柏崎市のご協力を得て市内の各コミュニティを回って話をさせていただきました。
皆様にとっては医療は身近にあって当たり前、夜間であろうと休日であろうと、どんなときでも診てくれるのは当たり前、医療機関にかかれば病気はみんな良くなるはずとお考えかもしれませんが、けっしてそんなことはありません。

国は今、高騰する医療費削減を目的に、医療体制の変革を目論んでいます。一言でいえば「病院から在宅へ」。つまり、病院に入院していると様々な医療行為が行われてお金がかかるため、早く退院して自宅(あるいは施設)に戻りなさい、そして地域全体で患者さんのサポートをしましょうというわけです。これを「地域包括ケアシステム」と呼びます。確かに考え方としては悪くはありません。高齢者にとって病院は生活の場としては不適当ですので、必要な治療が済んだらできるだけ早く自宅に戻るというのは、たぶん皆様も「うん、そうだよね」と肯かれるのではないかと思います。
でも自宅で誰が面倒をみるのですか? 昔のような大家族で、誰か世話をすることができる人がいることなど期待できません。二世代、三世代同居であっても、若い人は仕事に出ていて日中はいない場合もあります。多くの高齢者は夫婦二人暮らしあるいは独居です。退院して自宅に帰りたいと思っても、帰れない人もいるのです。
また、介護スタッフの不足のために、介護施設も十分確保されているとは言えないのが現状です。
そのような現実から目を背けて、とにかく「在宅」という国の姿勢は容認できません。「在宅」を押し進めようとするのなら、その環境整備のために国は力を尽くすべきです。
それなら病院に入院したままでいれば、とおっしゃる方もいるかもしれません。でも国はそれができないように診療報酬上で様々な締め付けをしてきています。病院としては経営を維持するためには長期入院は避けざるを得ないのです。

「かかりつけ医」を持ちましょうということもよく言われます。普段はかかりつけ医、必要時に病院へ、ということなのですが、これも今の病院の状況を鑑みた場合、正論です。慢性病を抱えた多くの高齢者が病院に押し寄せるというのは、病院にとっても患者さん自身にとっても大変です。病院は病院でなければできない医療に集中すべきと、私自身も思っています。しかしこういう役割分担は、都会なら可能かもしれませんが、人口密度が低く、カバーしなければならない一つの範囲が広い地方(もちろん新潟県もその一つです)では無理なのです。
柏崎のことを考えてみて下さい。人口は市街地に集中し、開業しておられる先生方もほとんどが市の中心部です。郊外の山沿いの地域の医療資源が乏しいことはおわかりになると思います。冬、雪が降ったとき、患者さんが診療所まで出かけるのも大変ですし、逆に診療所に来れない患者さんの自宅まで医師が往診するのも容易ではありません。非効率でもあります。バスに乗って、あるいは家族に車で送ってもらって中心部の病院に来る方が、ずっと便利で現実的なのです。
でも、かかりつけ医を持つことは大切です。病院の医師はほとんどが専門医で、自分の専門に関しては力を発揮しますが、専門外のことについては不得手です。あなたという一人の人全体を診るかかりつけ医としては適切とは言えません。可能であれば近くの開業医・診療所の先生と仲良くしてお互いの信頼関係を築き、普段のあなたを知っておいてもらうことがとても重要です。病院での医療が必要であれば、かかりつけ医の先生は自分が信頼している適切な病院を紹介してくれます。紹介状をお持ちになって病院を受診する方が、その後の流れはスムーズなのです。

現在の国民皆保険制度をなんとか維持したい、そのために医療費の高騰を抑えたいという国の思いも理解できないわけではありません。そしておそらく私達下々の者が何を言っても、医療政策は国の意向に沿って進められていくに違いありません。でも、何を言ってもどうせ無駄さとあきらめてしまったのでは、貧乏くじを引くのは私達自身なのです。

柏崎地域の皆様は医療の大切さを自覚し、医療体制の整備を求めておられます。でも何もしないでじっとしていても、その願いはかなえられません。柏崎の医療の将来を、他人事ではなく自分のこととして考える必要があります。柏崎の現状を理解し、限られた医療資源をどう活用していけばいいのか、国の方針と擦り合わせながら柏崎の医療をどうしていくのが現実的なのか、私達と一緒に考え、行動を起こしていただけませんか?

このコラムも最近は柏崎地域の医療の現状と将来についての内容が多くなって来て、中には聞き飽きたとおっしゃる方もいらっしゃるかもしれません。でもそれだけ私が危機感を抱いているんだということをご理解いただければ幸いです。

どうかよいお年をお迎えください。

平成29年12月21日
病院長 藤原正博

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