診療報酬改定

中央社会保険医療協議会(中医協)が2月7日、2018年度診療報酬改定を厚生労働大臣に答申しました…、なぁーんて言っても、多くの方々にとっては他人事だろうと思います。実際に医療機関にかかっておられる方であっても、「何のこと?」という感じでしょうか。

日本には国民皆保険という世界的にも優れた制度があります。前にもお話ししましたが、ここでもう一度簡単にご説明します。

国民全てが保険料を納め、それがプールされます。あなたが病気になって医療機関を受診します。診察を受け、診断のために必要な検査を受けます。そして入院だったり、外来治療だったり…、手術を受けたり、薬による治療だったり…。これらを医療サービスと呼びますが、その全てにお金がかかります。サービスはただではありません。とは言っても、かかったお金をあなたが全て支払うわけではありません。一部(原則3割)はあなたが負担しますが、残りの分については医療機関は医療サービスの代価を保険者(プールされたお金を管理している組織です)に請求し、支払ってもらうのです。
一つ一つの医療サービスは厚生労働省による公定価格がつけられています。外来で診療を受けるといくら、入院するといくら、この検査はいくら、この薬はいくら、この注射はいくら、といった具合です。あなたが受けた医療サービスが総計いくらであったかを医療機関は一月ごとにまとめ、診療報酬明細書(レセプトと言います)をつくって保険者に請求します。
最近は入院についてはDPCという包括制度(この病気で入院した場合には全てひっくるめていくら)が導入され、病院の多くはそれを採用しています。詳細は省きますが、DPCであってもかかった費用を保険者に請求するのは同様です。
ただし、保険者も医療機関も数が多く、個別にやり取りするのは大変なので、都道府県ごとにある二つの審査支払機関(社会保険診療報酬支払基金、国民健康保険団体連合会)が請求を受け、内容をチェックした上でお金のやり取りを代行しています。

お分かりいただけましたか?

医療サービスの公定価格は2年毎に中医協の場で議論され、改定されます。医療機関の収入は、そのほとんどを診療報酬に依拠しておりますので、どのような改定が行われるのかは医療機関にとっては重大事です。今回も病院運営にかかわる根幹的な部分の見直し・変更がありました。

これまでは「一般病棟入院基本料」というものがあり、看護職員の配置(単純に言うと、1日24時間を平均して何人の患者さんに対して看護師1名が勤務しているかを表現したもので、15対1、13対1、10対1、7対1の4種類があり、7対1が最も手厚い看護体制ということになります)によって病院が得られる報酬が違っていました(当然ながら7対1が最も高い)。
以前7対1が導入されたとき、多くの病院がこぞってそちらに移行し、看護師の奪い合いという事態を招きました。また7対1の病院が増えればそれだけ医療費が増えることになります。
もともと国は、頑張って急性期医療を提供している病院の努力に報いるべく7対1を導入したのであって、そこに移行するのはごく一部の大病院と考えていたようです。ところがその思惑がはずれて多くの中小病院が7対1に移行したことでかえって医療費の増大に繋がったため、以後何とか7対1の病院を減らすべく、診療報酬改定のたびに締め付けを強めて来ました。
首都圏には7対1看護を標榜していても、それに見合った医療を提供できていない病院が多々あり、国はそういった中小病院をターゲットとして、10対1に引きずりおろそうと画策しているというのが実情です。

ところがその煽りを地方の病院が受けることになりました。たとえば当院の場合、7対1看護基準をとっていますが、これを維持するためには「平均在院日数」が18日以内、「重症度、医療・看護必要度」が25%以上(つまり入院患者のうち、重症で手のかかる人が25%以上いますよということです)という縛りがあります。これまではなんとかクリアしてきましたが、今回の改定で「重症度、医療・看護必要度」が30%以上に引き上げられました。そうなるとこの4月以降はその基準を達成することがとても難しくなります。

何故なのか。当院は基本的には急性期医療を提供する病院であり、事実年間2,500台前後の救急搬送を受け入れ、柏崎地域の皆さんのためにという使命感のもと、スタッフの数が十分でない中それぞれが奮闘しています。しかし一方で急性期の医療は必要なくなったのに、その後の転院先がみつからず、当院での入院を継続せざるを得ない方がかなりおられます。当然その方達の「重症度、医療・看護必要度」は低くなります。「重症度、医療・看護必要度」の高い方と低い方とが混在しているため、病院全体を均すと基準ギリギリとなってしまうのです。
都会の大病院であれば急性期を過ぎた患者さんは別の病院へどうぞ、で済むのでしょうが、地方の多くの病院はそうはいきません。特に柏崎地域には活用できる慢性期病床がほとんどありません。退院可能な状態であっても、退院先がなかなか見つからないのが実情です。

業務内容を考えると、当院は何としても7対1看護基準を維持しなければなりません。10対1に落とした場合には、必要な医療サービスの提供に支障をきたすことになります。また看護師の負担が大きくなるのは間違いありません。でも国の定めた縛りをクリアできなければ…。

さてどうしたものか、病院長として頭を悩ませている昨今です。

平成30年2月22日
病院長 藤原正博

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