病院のアメニティ

平成に入った頃から病院のアメニティ(生活環境の快適さ)に関心が寄せられるようになりました。それまでは大部屋が主体で、8人部屋とか10人部屋などがありました。入院している患者さんの生活のことなどほとんど考慮されませんでした。中には鼾のひどい人がいて、同室の他の患者さんは夜よく眠れないというようなこともありました。とにかく病院は病気を治すことが目的、アメニティまで考えていられない、というのが古い病院のコンセプトだったのでしょう。
しかし最近は違います。入院している患者さんにとって病院は生活の場ですから、できるだけ快適に過ごせるように、という配慮がなされるようになりました。

東京の聖路加国際病院が新築されたとき、全室個室であることが話題となりましたが、平成23年に建てられた足利赤十字病院も全室個室です。以前は病床数に占める個室の割合が制限されていたのですが、その規制が撤廃されたことで、新築病院では個室が増える傾向にあります。
個室を増やせばそれだけコストがかかりますが、病床稼働率を上げることで解決できるようです。

私は以前から病室は全部個室の方がよいと考えておりますが、人によっては大部屋の方がいいという方もいらっしゃいます。同じ部屋に入院している患者さん同士がお互いに励まし合えるから、という理由です。確かに一理ありますが、かつて、がん治療を受けていた患者さんが容態悪化のため大部屋から個室に移されるということがしょっちゅうあり、同室の同じがんの患者さんがとてもショックを受けたというのも事実です。

個室が増える、あるいは全室個室化ということには別の理由もあります。一つは感染症対策です。インフルエンザなどのウイルスを面会者が持ち込むと、大部屋であれば一気に感染が拡がるリスクがありますが、個室であれば一人の患者さんへの感染で済みます。
もう一つは高齢者が特に夜間自分がどこにいるのかわからなくなり、混乱して大声をあげるというようなことがしばしばありますが、そのことで他の患者さんに迷惑をかけるのを防げます。最近は認知症の高齢者が増えていますので、そのような患者さんへの対応もやりやすくなるというメリットがあります。
さらにがんなどで容態が悪化したとき、患者さんを大部屋から個室に移すようなことをする必要はなくなり、ご家族と過ごす時間を確保できます。

病院の個室が増えているのは患者さん自身のご希望でもあります。プライバシー確保のため個室を希望される方が増えているのは確かです。

一時大部屋(4床室)でありながら各ベッドサイドに窓があって外の景色を眺められるという造りが取り入れられ、話題になったことがあります。特殊な構造のため建設コストはかかりますが、患者さんにとってはとてもいい配慮なのではないでしょうか。
通常の4床室、6床室ではベッドから外を眺められるのは二人の患者さんだけです。特に6床室の場合、3つ並んだベッドの真ん中にいる患者さんはとても窮屈な思いをします。

東京には病院内にコンビニ、カフェ、レストラン、さらにはブティック他の店があり、ミニショッピングモールのようなものを形作っている病院もあります。

当院が現在地に新築移転したのは平成3年ですが、工事が始まったのは平成元年、設計はその前でした。そのためアメニティについての配慮は不十分で、ご利用いただく皆さんにはご不自由、ご迷惑をおかけすることもあるのですが、まだ当分の間は今の建物を使っていかなければなりません。ご容赦願いたいと思います。
ただ細かい改修は必要に応じて行っていきたいと思います。6床室だけは何とかなくしたいと考えたのですが、6床室を全て4床室にすると総病床数がかなり減り、入院が必要な患者さんを入院させられない事態が生じる可能性があったため、一部は残してあります。

以前に比べて入院期間は短縮しているものの、入院している間は病院は患者さんにとっては生活の場です。少しでも気持ちよく過ごしていただけるような工夫は今後も続けて参りたいと思います。

平成30年7月12日
病院長 藤原正博

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