「協働」という言葉の意味を噛みしめながら…

今回は皆さんに是非読んでいただきたい一冊の本をご紹介したいと思います。
「賢い患者」(山口育子 著 岩波新書1725)です。
一般の方だけではなく、医療関係者にも読んでいただきたい。

皆さんは「ささえあい医療人権センターCOML(コムル)」という組織をご存知でしょうか。Consumer Organization for Medicine & Lawの頭文字をとってCOMLです。「私達一人一人が『いのちの主人公』『からだの責任者』、そんな自覚を持った『賢い患者』になりましょう」を合言葉に、1990年以降現在まで精力的に活動を続けているNPO法人です。
この組織を立ち上げたのが辻本好子氏、そして発足1年後に加わってから辻本氏と二人三脚で活動を進めて来たのが山口育子氏です。残念ながら辻本氏は2011年に胃がんで亡くなられましたが、その後山口氏が理事長職を引き継ぎ、COMLを牽引しておられます。

COMLがどのような活動をしているのかは「賢い患者」をお読みいただきたいと思いますが、私は以前よりCOMLの活動に共感し、長岡市で開催していた「がんセミナー」に辻本氏を講師としてお招きし、講演を拝聴したことがあります。とてもいい話を伺うことができました。辻本氏もとても素敵な女性でした。
そんな辻本氏が亡くなられたのは本当に残念なのですが、亡くなられるまでの間山口氏が辻本氏をどう支えたのか、そのあたりの経緯についても「賢い患者」の中に記載されています。

医療はもともと不確実で限界があります。その中で満足のいくいい医療を受けるあるいは実践するためには、医療側と患者側との信頼関係を築く必要があります。そして一緒に病気の治療に取り組む必要があります。それを山口氏は「協働」という言葉で表現しています。

さて、あとは本を読んでいただくことにして、最後に「あとがきにかえて」から引用した以下の文をご紹介したいと思います。

「どのような集団も、多くの人が集まって統計をとると、釣り鐘の形の正規分布曲線を描きます。‟医師”という集団であれば、一方に人格に優れ、知識も豊富で、常に学ぶ意欲があり、腕も確かという少数がいて、もう一方には患者の気持ちなどお構いなしに問題を起こす医師も少数いるわけです。」
「‟患者”という集団も同様に、一方に冷静で自立・成熟した賢い患者が少数いて、もう一方にはモンスターと呼ばれる無理難題を押しつけてくる患者も少数います。」
「これまで、ともすれば医療者も患者も相手のマイナス部分にいる人たちを問題視して、‟叩いて”きました。」
「しかし、それでは医療はよくならないのではないかと私は感じてきました。そこで、COMLでは正規分布曲線の中央値をプラスの方向にずらすことのできる活動に力を入れたいと考えているのです。」

 平成30年7月26日
病院長 藤原正博

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