医療崩壊の危機はすぐそこに

主に私立大学の医学部入試において、女子受験生に対する不当な扱いが問題となりました。
最初に発覚した東京医科大学の言い分は、「女性は結婚や出産で離職する人が多く、また短時間勤務になりやすいため男性医師ほど働けず、系列病院のスタッフを確保するためにはやむを得ない措置だった」ということでした。
文部科学省による調査が行われ、東京医大以外にも女子受験生に不利な措置をとっていた大学があることが明らかとなりました。国公立大学も一部含まれていたようです。

私が医学部の学生だった40数年前は、女子学生の比率は1割程度でしたが、徐々に増加して現在は半分近くを占めるようになっています。医師になって世のため人のために役立ちたいという志を持った人であれば、女性だからということで差別するものではありません。
ただ女性の場合、妊娠・出産、育児で仕事に就けない期間があることは事実で、男性医師に比べるとハンデを負っているのは確かです。しかし多くの女性医師はそのハンデを乗り越えて活躍しています。
女性医師に存分に能力を発揮してもらうためには、周りのサポートが必要です。昔に比べると徐々に整ってきているようですが、まだまだ不十分です。

このような問題が出てくるのは何と言っても医師不足が最大の原因です。医師数が充足していてみんながゆとりを持って働ける状況であれば、抜けた人の分は誰かが補うことができます。でも現状は違います。ひとり抜ければ他の人に大きな負担がかかります。
ただでさえ忙しいのに抜けた医師の仕事まで請け負わなければならないとなると、もう勘弁してくれということになりかねません。そしてそのことが離職に繋がります。悪循環なのです。

これを解決するには医師数を増やすしかありません。しかし国は医師増員には消極的です。いずれ医師は余るというのが国の言い分です。「いずれ」というのはどうやら10年後、20年後ということらしく、しかも医師が今と同じ働き方をして、というのが前提のようです。医師の時間外労働が制限されるとしたら、いったいいつになったら医療の需給のバランスがとれ、医師が余るのでしょうか。
このままでは医師の過労死・過労自殺は避けられません。また地方の医療提供に支障をきたすようになることは間違いありません。何年か前に言われた「医療崩壊」という言葉を最近はあまり耳にしなくなりましたが、これから10~20年間はその言葉が現実となる可能性があり、当地域も含めて地方の医療体制を維持するためにどうすればいいのか、医療界、行政、地域住民が一体となって考える必要があります。

 

平成31年1月24日
病院長 藤原正博

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