地域医療構想と今後の柏崎の医療

あけましておめでとうございます。皆さんはどのような新年を迎えられたでしょうか。インフルエンザやノロなど各種ウイルス疾患が流行していますが、皆さんの体調は如何でしょうか。

私達は皆さんにいい医療を受けていただきたいと思っておりますが、そのためには皆さんに医療というものを理解していただく必要があります。医療にできることは何なのか、できないことは何なのか、今後の医療はどういう方向に進むのか、国は何を考えているのか、そして医療に伴うリスクなど、様々なテーマでその時々のトピックスを、皆さんにお伝えしていきたいと思います。
2~3週ごとに更新していきたいと思っておりますので、お読みいただければ幸いです。
また何かご意見、ご感想がございましたら、私宛お寄せ下さいますよう、お願い申し上げます。

さて、今年の第一弾は「地域医療構想」について。
これについては前にも何度か触れているのですが、各地域での検討結果がまとまり、「新潟県地域医療構想(素案)」として提示されましたので、その内容を簡単にご紹介したいと思います。

国は、これからの人口減少、超高齢社会を見据えて、各地域での医療の在り方を考えなさいと言うのですが、これはあくまでも表向きであって、医療費削減のために金のかかる急性期病床をなんとか減らしたい、というのが本音です。
そんな中で、各都道府県がそれぞれの現状を踏まえて地域医療構想についての検討を進めて来ました。新潟県でも7つの二次医療圏単位での議論が行われ、それをもとに県の保険医療推進協議会専門委員会(地域医療構想策定部会)での検討が行われ、昨年12月に素案がまとまりました。

中越構想区域は長岡市、柏崎市、小千谷市、見附市、出雲崎町、刈羽村の6市町村で構成され、大きく長岡地域と柏崎地域とに分かれます。国が二次医療圏単位、病院単位での役割分担を求めていたことから、当初私は、急性期は長岡の病院が担い、当院はその後方病院となり、規模縮小を余儀なくされるのでは、と心配していました。しかし最終的には長岡地域と柏崎地域はそれぞれ地域内完結型の医療を提供しており、今後もそれを維持することが必要であることが認知されました。
たとえばその地域住民がその地域内の医療機関に入院している割合(完結率)をみてみると、疾患全体では長岡市は84.2%、柏崎市は80.3%です。これを救急医療に限定すると、長岡市は93.8%、柏崎市は88.2%です。柏崎市における8%の違いは、主に悪性新生物によるもので、柏崎市の完結率は70.2%、他の30%の人達は新潟市、長岡市の病院に入院しています。悪性新生物の場合はそれぞれの医療機関で対応できるもの、できないものがあるために止むを得ないと思いますが、救急医療がほぼ地域内で完結しているのはとても重要なことだと思います。

当院は年間約2,500台の救急搬送を受け入れています。都会のように断るなどということはありません。また柏崎市消防本部管内のデータによれば、通報を受けてから病院に収容するまでの平均所要時間は41.4分(平成26年)です。
もし当院が十分な救急対応ができなくなったとしたら、長岡市まで搬送される患者が増え、搬送時間は延びることになります。疾患によっては救命できなくなることもあり得ます。
柏崎地域はこの地域内での完結型医療体制を維持していかなければならないのです。

国は病院単位での役割分担を求めています。つまりある病院は急性期医療に専念し、患者の状態が落ち着いたら別の回復期・慢性期の病院に移る、という形です。大都会ならひょっとすると可能かもしれません。しかし柏崎地域では現時点において回復期・慢性期の患者を受け入れる医療機関や、在宅医療を支える体制は不十分です。また当院は基本的には急性期病院ですが、回復期・慢性期の患者も入院しています。その人達をよその施設に移して当院が急性期医療に特化するなどということはできないのです。
おそらくこういった状況は日本全国どこの地域でも同様だと思います。病院単位での機能分化・役割分担など、絵に描いた餅でしかないのです。

じゃあ今のままで全く問題はないのか、というと、そうでもありません。医師、看護師、薬剤師などスタッフ不足の中で頑張っている病院も、限界に近づいています。開業医も少なくて在宅医療をサポートするのも困難です。医療費も年々高騰し、国が危機感を覚えるのもわからないわけではありません。でも高齢化は進み、医療を必要とする人は今後も増え続けます。そんな状況にあって今後の医療提供体制をどうするのか…。他人事ではないのです。

今回の地域医療構想の策定は、ある意味チャンスだったのかもしれません。地域で、医療関係者だけではなく一般住民も交えて、みんなで医療について考えるいい機会だったのかもしれませんが、結果的には現状追認で終わってしまったような気がします。
国が「つくれ」と言うからとりあえずつくってみた、というのが正直なところかもしれません。でもこれで終わらせてしまってはダメです。今回の地域医療構想の策定にあたって大勢の方が関わったわけですから、今の、そして今後の医療についての問題意識を共有して、将来も持続可能な医療体制を構築するにはどうすればいいのか、みんなで考えてみるべきでしょう。

国民皆保険制度のもと、全ての国民が貧富によって差別されることなく平等に医療を受けられることに感謝し、今後もそれを維持するにはどうすればいいのかを、皆さんにも考えていただきたいと思います。

平成29年1月12日
病院長 藤原正博

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