新型インフルエンザパンデミックへの危惧

全国的に猛威を振るったインフルエンザもそろそろピークを過ぎたようです。
しかし考えてみると、日本でインフルエンザが拡がるのは当然なのかもしれません。

インフルエンザはインフルエンザウイルスによる感染症で、主な感染経路は飛沫感染と接触感染です。
インフルエンザの患者さんが咳やくしゃみをすると、ウイルスを含んだ飛沫が飛び散ります。その飛沫を近くにいる人が鼻や口から吸いこむことでウイルスが気道に付着するというのが飛沫感染です。1回のくしゃみで4万個ほどの飛沫が飛び散り、2メートル以内にいる人はその飛沫を吸い込む可能性があると言われています。
接触感染というのは、患者さんの手にウイルスがついている状態で患者さんと握手をしたり、階段の手すりやドアノブなどウイルスが付着したものに触れたりすることで、ウイルスが自分の手にくっつき、その手で鼻や口に触れることでウイルスが侵入するというものです。

インフルエンザは「かぜ症候群」の一つで、基本的には自然治癒する疾患です。かぜは薬を飲んでも治りません。いわゆるかぜ薬はあくまでも症状を和らげるだけです。ところがインフルエンザだけは「効く」薬があって、インフルエンザと診断されるとその薬が処方されます。でもその薬はウイルスの増殖を抑えて症状を軽減するだけで、治すものではありません。
インフルエンザであっても他のかぜであっても、原則は自宅安静なのですが、日本の社会はそれを許してくれません。かぜくらいで仕事を休むなんて…、というのが多くの人々の考え方です。インフルエンザだけは医療機関での証明があれば一定期間休むことができます。
またインフルエンザは他のかぜに比べると症状がきついので、それを和らげるために薬に頼りがちです。
加えてテレビコマーシャルなどで「かぜかなと思ったら早めの」医療機関受診を呼びかけていることもあって、かぜ症状のある人々の多くがインフルエンザの診断と薬を求めて医療機関に集中します。
その結果どうなるか…。混雑した外来で待っているうちに患者さん自身の具合が悪くなり、さらに他人にうつす可能性があります。医療スタッフに感染するリスクが高まります。

インフルエンザは2~3日(場合によっては1週間くらい)の潜伏期間の後発症しますが、症状の出る少し前から発症後2週間くらいまでウイルスを排出します。迅速診断キットで陽性となるのは症状が出てから18~24時間後で、発症直後は陽性とならない可能性があります。熱が出た、それっということで医療機関を受診してもインフルエンザの診断がつかず、解熱剤を処方されて仕事に出る、段々具合が悪くなって再び医療機関を受診し、今度はインフルエンザと診断される…、その間にこの人はインフルエンザウイルスをあちこちに撒き散らすことになるのです。

幸い今の季節性インフルエンザはほとんどが治りますので、ワーッと流行してもさほど大きな問題とはならないかもしれません。
しかし将来強毒性の新型インフルエンザが流行するような事態となった場合には、多数の死者が出ることが予想されています。それを最小限にとどめるためには感染の拡大を防ぐ努力が求められるのですが、現在の人々の行動様式では、それを望むことはできません。
かぜ症状で診断と薬を求めて多くの人が医療機関に殺到、その結果、病気で体力が落ちている他の患者さんに感染し、その患者さんの命を危険にさらす、医療スタッフにも感染し、医療機関が機能しなくなる…。
症状があっても休まず仕事に出る、特に大都会では満員電車で身動きもできない状態で通勤していますが、そのときにインフルエンザに罹患した人が咳やくしゃみをすれば、その周辺の人々は撒き散らされたウイルスの侵入を避けることはできません。あっという間に感染が拡がることは火を見るよりも明らかです。

インフルエンザが疑われた場合には受診を控えるよう呼びかける国が多いのに、なぜ日本は「早期受診」なのでしょうか。政府が「プレミアムフライデー」とかを提唱しているようですが、そんなことよりかぜをひいたら休めるようにすることの方が、ずっと重要だと思うのですが…。

 平成29年2月23日
病院長 藤原正博

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